生活習慣病の主な疾患
高血圧
上の血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、または下の血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上を高血圧といいます(家庭血圧は135/85mmHg以上)。血圧が高くてもほとんど症状は出ませんが、そのまま放置すれば脳卒中や心臓病、腎臓病などの重大な病気を発症する危険性が高まります。約8~9割が原因をひとつに定めることのできない本態性高血圧であり、食塩の過剰摂取、肥満、ストレス、運動不足、遺伝的な要因などが組み合わさって発症します。食生活を中心とした生活習慣の改善が予防・治療のため非常に大切です。当院では食塩摂取量の測定(1日の摂取量6g未満が目標)や特定の原因をもつ二次性高血圧の鑑別についても必要に応じて行っています。
糖尿病
インスリンという血糖を下げるホルモンの作用不足により、慢性的に高血糖となる病気です。その診断には、血糖値(空腹時≧126mg/dLあるいは随時≧200mg/dL)や、1~2ヶ月間の血糖値を反映するHbA1c(≧6.5%)が用いられます。血糖値が著しく高くなれば、口渇、多飲、多尿、体重減少といった症状がみられますが、程度が軽ければほとんど症状に気づかれないため長期間放置されてしまいます。軽度であっても長く高血糖にさらされ続けると、いわゆる三大合併症(網膜症、腎症、神経障害)を発症することになります。さらに、糖尿病では全身の動脈硬化が促進されるため、心筋梗塞、脳梗塞、足の閉塞性動脈硬化症などを引き起こします。これらの発症や悪化を防ぐためには、適切な食事療法、運動療法を心がけましょう。それでも血糖値が低下しない場合は、経口薬やインスリン療法を開始する必要があります。
脂質異常症
血液中の「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールが多い(140mg/dL以上、120~139mg/dLは境界域)、中性脂肪が多い(150mg/dL以上)、または「善玉」のHDLコレステロールが少ない(40mg/dL未満)状態のことをいいます。生活習慣の欧米化に伴い日本人のLDLコレステロールや中性脂肪の値が上昇し、脳梗塞や狭心症、心筋梗塞といった動脈硬化による病気が増えてきました。食事内容を見直し、禁煙や適度な運動を続けていくことが大事です。また、スタチンをはじめとした有効な治療薬があり、当院ではリスクに応じてその必要性を適切に判断いたします。また、家族性高コレステロール血症は、生まれつきLDLコレステロール値が高く、若いときから動脈硬化が進行する遺伝性の病気です。血のつながったご家族のなかにも、コレステロールが高く、心筋梗塞のような心臓病をお持ちの方はご相談ください。
高尿酸血症・痛風
高尿酸血症は、痛風や腎障害などの原因であり、高血圧、糖尿病、脳・心血管病、メタボリックシンドロームとも密接に関係しています。痛風発作は足の親指の付け根に好発し、赤く脹れて強い痛みを伴います。
高尿酸血症は、年齢や性別を問わず、血液中の尿酸値が7mg/dLを超えるものと定められています。特に9mg/dL以上では痛風発作のリスクが高いため尿酸を抑える薬を飲む必要があります。高血圧などの生活習慣病や心臓病など臓器障害を合併している場合は、無症状であっても8mg/dLを超えてくれば服薬を考慮しなければなりません。
痛風発作は遺伝要因よりも環境要因による影響が大きいとされています。プリン体の多い食事や酒類(レバー、魚の干物、白子、ビールなど)を避けて、適度な運動や体重管理など生活習慣を見直すよう心がけてください。
肥満症
肥満症(ひまんしょう)は、体内に過剰な脂肪が蓄積され、健康に悪影響を及ぼす状態を指します。単に体重が多いだけでなく、体脂肪率が異常に高いことが特徴です。肥満症は、生活習慣が主な原因であり、食事の過剰摂取や運動不足が大きな要因となります。また、遺伝的要因やホルモンバランスの乱れも関与することがあります。
肥満症の基準として、体格指数(BMI)が一般的に用いられます。BMIが30以上であれば肥満症とされ、肥満の程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
肥満症が進行すると、さまざまな健康リスクを引き起こします。例えば、心臓病(動脈硬化や心筋梗塞など)、糖尿病(2型糖尿病)、高血圧、睡眠時無呼吸症候群、さらにはがん(特に大腸がんや乳がんなど)のリスクが増加します。また、肥満は関節に負担をかけ、関節炎や腰痛の原因にもなります。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(SAS)について
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome: SAS)は、睡眠中に呼吸が繰り返し止まる、または弱まる疾患です。一晩7時間の睡眠中に30回以上の無呼吸がある場合に診断されます。この疾患は良質な睡眠を妨げ、日中の強い眠気や集中力の低下を引き起こすだけでなく、高血圧、虚血性心疾患、糖尿病などの生活習慣病を合併しやすく、生命予後に影響を与えることが明らかになっています。
睡眠時無呼吸症候群の種類と原因
SASは主に以下の2つに分類されます。
- 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA):気道が閉塞することで起こります。肥満、加齢、喫煙、アルコール摂取などがリスクを高めます。
- 中枢性睡眠時無呼吸(CSA):脳の呼吸制御の異常が原因です。
主な症状
- 大きないびき
- 睡眠中の呼吸停止
- 日中の強い眠気
- 集中力の低下
- 起床時の頭痛
診断と治療
診断には、**睡眠ポリグラフ検査(PSG)**が用いられます。適切な治療を受けることで、患者様の「生活の質」を大きく向上させることができます。主な治療法は以下の通りです。
- 生活習慣の改善:体重管理や禁煙、適切な飲酒制限など
- CPAP(持続陽圧呼吸療法):気道を広げることで無呼吸を防ぐ装置の使用
- その他の治療法:必要に応じて外科的治療や薬物療法も検討されます
早期受診の重要性
日本では、睡眠時無呼吸症候群の患者数は約200万人と言われています。症状を放置すると、日中の活動性や労働の質を低くださせるだけでなく、重大な健康リスクを引き起こします。疑わしい症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、正確な診断と適切な治療を受けることが重要です。
当院ではCPAP対応業者と連携をとり、睡眠時無呼吸症候群の診断、CPAPによる治療を行っております。