消化器とは

逆流性食道炎

逆流性食道炎は、胃酸や胃の内容物が食道に逆流することで、食道の粘膜が炎症を起こす病気です。この病気の主な原因は、食道と胃の境界にある筋肉、いわゆる下部食道括約筋の機能低下によるものです。食事の内容や生活習慣、ストレスなどが影響して起こることが多いとされています。

ピロリ菌感染症

ピロリ菌感染症とは、ヘリコバクター・ピロリ菌が胃に感染し、胃粘膜に炎症を引き起こす病気です。この菌は主に幼少期に口を介して感染し、一度感染すると除菌治療をしない限り胃内に長期間生存します。感染すると、慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因となり、長期的には胃がんのリスクも高まります。症状はない場合もありますが、検査で感染が確認された場合、抗生物質による除菌治療が推奨されます。除菌により、胃の疾患リスクを軽減し、健康を守ることができます。

機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシア（FD）とは、胃や上腹部に不快な症状が続くにもかかわらず、内視鏡検査や血液検査などで明らかな異常が見つからない状態を指します。主な症状には、食後の胃もたれ、胃の膨満感、みぞおちの痛みや灼熱感などがあります。原因として、胃の運動機能の低下、ストレス、自律神経の乱れ、過敏な知覚反応などが考えられます。症状が生活に影響を与える場合、薬物療法や食事改善、ストレス管理が行われます。命に関わる疾患ではありませんが、長期的な対応が必要な場合があります

アニサキス症

アニサキスは、マリンフードを中心とした食事を通じて人間に感染する寄生虫の一つです。主に生の魚介類を食べた際に、その中に含まれているアニサキスの幼虫が原因で感染します。この寄生虫は、魚やイカなどの海洋生物の体内に生息しており、人間が感染すると、主に胃や腸に寄生します。アニサキスの起源は、海洋生物の間での食物連鎖の中で繁殖していることが知られています。小魚がプランクトンに寄生しているアニサキスの幼虫を摂取し、その小魚を食べる大きな魚やイカが次の宿主となります。そして、その魚やイカが人間に食べられることで、感染が広がっていくのです。人間に感染する経路としては、生の魚介類を食べることが最も一般的です。特に、刺身や寿司、タルタルステーキなどの生食がリスクとなります。加熱調理や冷凍保存を適切に行うことで、アニサキスの感染リスクは大幅に低減します。

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群とは、精神的なストレスや自律神経バランスの乱れなどによって腸のはたらきに異常が生じ、便秘や下痢など排便の異常を引き起こす病気です。排便異常は人によって異なり、絶えず下痢が続く場合もあれば、便秘と下痢を数日ごとに繰り返すこともあります。また、腹痛やお腹の張りなどを伴うことも多く、中にはトイレから離れられず日常生活に支障をきたすような場合も少なくありません。

潰瘍性大腸炎・クローン病

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜を中心にびらんや潰瘍を形成します。
症状としては下痢や血便、腹痛、しぶり腹（便意があっても便が出ない、出ても少量）、重症化すると発熱、体重減少、貧血などがみられることもあります。
難病に指定されており明確な原因は分かっていませんが、適切な治療により症状を抑制できれば、健康な人とほとんど変わらない日常生活を送ることが可能です。

虚血性腸炎

虚血性腸炎とは、大腸の血流が低下することで炎症が生じる病気です。血流不足により、大腸の粘膜が傷つき、腹痛や下痢、血便などの症状が現れます。特に、左下腹部の急激な痛みと鮮血の混じった下痢が特徴的です。この疾患は中高年に多く見られ、便秘や脱水、動脈硬化、高血圧などが誘因となります。軽症の場合、血流が回復すれば自然治癒することもありますが、重症化すると腸の壊死や穿孔（腸に穴が開く）が起こり、緊急の手術が必要になることがあります。診断には症状や血液検査、CT検査、大腸内視鏡などが用いられます。治療は安静、点滴での水分補給、必要に応じて抗生物質を使用します。原因となる基礎疾患の管理も重要です。虚血性腸炎は多くの場合予後良好ですが、早期診断と適切な治療が重症化の防止に繋がります。

急性虫垂炎

急性虫垂炎とは、いわゆる「盲腸」として知られる虫垂が炎症を起こした状態です。虫垂は大腸の一部で、消化には大きな役割を持たない器官ですが、感染や詰まり（糞石やリンパ組織の腫れ）が原因で炎症を起こすことがあります。主な症状は、腹部全体の鈍い痛みから始まり、次第に右下腹部に鋭い痛みが集中することです。そのほか、発熱、吐き気、嘔吐、食欲不振もよく見られます。急性虫垂炎は適切に治療しないと、虫垂が破裂し腹膜炎を引き起こす可能性があり、命に関わることもあります。診断には身体診察や血液検査、超音波、CT検査が用いられます。治療は近年では、最初に抗生剤治療が行われ炎症が改善した後に、待機的に虫垂切除術（主に腹腔鏡手術）が行われることが多くなってきております。症状・状態によっては緊急手術が第一選択になることもあります。当院では消化器外科専門医が、適切な診断と治療に関するご相談に応じます。

大腸憩室炎

大腸憩室炎とは、大腸の壁に小さな袋状の突出物（憩室）ができ、その中で炎症が起きる病気です。憩室は、特に食物繊維が不足し、腸内圧が高くなることで形成されます。大腸の特に左下腹部に多く見られ、通常は無症状ですが、憩室に便が詰まったり、感染を起こしたりすると炎症が生じ、腹痛、発熱、下痢や便秘、血便などが現れます。憩室炎は、年齢が進むにつれて発症リスクが高くなり、特に50歳以上の人に多く見られます。診断は、血液検査、超音波検査、CT検査などで行います。治療は、軽度のケースでは抗生物質での薬物療法が行われ、重症の場合は手術が必要となることもあります。憩室炎の予防には、食物繊維を多く含む食事を摂ることが推奨され、腸内の圧力を低く保つことが大切です。適切な治療を受けることで、重篤な合併症を防ぐことができます。

腸閉塞

腸閉塞とは、腸内の内容物が正常に通過できなくなる状態で、腸管が部分的または完全に閉塞することによって引き起こされます。原因としては、腸管の癒着、腸ねじれ、腫瘍、炎症、腸内での便秘や異物の詰まりなどが挙げられます。腸閉塞になると、腹痛、膨満感、吐き気、嘔吐、便通の異常（便が出ない、またはガスが出ない）などが現れます。腸が閉塞すると、腸内でのガスや液体の流れが滞り、腸の血流が悪化し、最終的には腸の壊死を引き起こすこともあります。診断は、身体診察、腹部のX線やCT検査を用いて行われます。治療は、軽度のケースでは絶食や点滴で腸の機能を回復させることがありますが、重症の場合は外科的手術で閉塞部分を切除することが必要です。腸閉塞は早期に適切な治療を行うことで、合併症を防ぎ、回復を促進することができます。

大腸がん

大腸がんとは、大腸（結腸や直腸）の粘膜に発生する悪性の腫瘍です。最初は良性のポリープとして現れることが多いですが、時間とともにがん化することがあります。大腸がんの主な原因には、遺伝的要因、食生活（脂肪や赤身肉の過剰摂取）、運動不足、肥満、喫煙、飲酒などが関係しています。初期の大腸がんは無症状であることが多く、進行するまで気づかないことが一般的です。しかし、進行すると血便、便秘や下痢、腹痛、体重減少などの症状が現れます。早期発見のためには、定期的な検査（便潜血検査や内視鏡検査）が重要です。診断が確定した場合、治療はがんの進行度に応じて手術、化学療法、放射線治療などが行われます。早期の大腸がんは治療の成功率が高いため、定期的なスクリーニング検査が推奨されています。

臍（へそ）ヘルニア

臍ヘルニアとは、いわゆる「でべそ」とも呼ばれる状態で、腹部の臍（へそ）の部分から腸や脂肪組織が皮膚の下に突出する病気です。これは腹壁にある筋肉や組織の隙間（ヘルニア門）を通じて、腹腔内の臓器が外側に飛び出すことで起こります。臍ヘルニアは、主に乳幼児に見られ、生後間もない頃に腹壁が十分に閉じきらないことが原因です。泣いたり、お腹に力を入れたりすると、へそ部分が膨らんで目立ちますが、多くの場合、成長とともに自然に治ります。
成人の場合は、妊娠や肥満、腹部の手術歴などで腹壁に負担がかかり、臍ヘルニアが発症することがあります。症状が軽い場合は経過観察で済みますが、痛みや腸閉塞のリスクがある場合には、外科手術が必要になります。特に成人の臍ヘルニアは自然治癒しにくいため、適切な治療が重要です。

鼠径ヘルニア

鼠径ヘルニア（そけいヘルニア）とは、腹壁の一部に隙間や筋膜の弱い部分があり、そこから腸や脂肪組織が鼠径部（足の付け根付近）に飛び出してしまう病気です。一般的に「脱腸」とも呼ばれ、特に男性に多く見られます。発症の原因は、先天的な腹壁の構造の弱さや加齢による筋膜のゆるみ、長時間の立ち仕事、重い物の持ち運び、慢性的な咳や便秘などで腹圧が繰り返しかかることです。
主な症状は、鼠径部に柔らかい膨らみができることで、立ったり力を入れたりすると膨らみが大きくなり、横になると小さくなることが特徴です。多くの場合、痛みは軽度ですが、腸が飛び出して戻らなくなる嵌頓（かんとん）が起こると、腸が壊死し、命に関わることがあります。鼠径ヘルニアは自然には治らず、治療には外科的手術が必要です。手術では飛び出した組織を元に戻し、腹壁を補強して再発を防ぎます。早めの診断と治療が重要です

胃がん

胃がんとは

胃がんは、胃の最も内側にある粘膜の細胞が何らかの要因でがん細胞へと変化し、増殖を繰り返すことで発生します。進行すると、がんは胃の壁の外側へと徐々に広がり、リンパ節や他の臓器への転移リスクが高まります。さらに、胃の外側にある大腸や膵臓、腹膜などへ直接浸潤することもあります。

胃がんの原因

喫煙や塩分の過剰摂取、ヘリコバクター・ピロリ（ピロリ菌）への持続的な感染が、胃がんのリスクを高めるとされています。また、ストレス、暴飲暴食、睡眠不足などの生活習慣の乱れも要因の一つと考えられています。

胃がんの症状

胃がんは、早期の段階ではほとんど症状が現れません。進行しても、症状がはっきりしない場合があります。
主な症状としては、みぞおちの痛みや不快感、胸やけ、食欲の低下、吐き気などが挙げられます。ただし、これらの症状は胃がん特有のものではないため、正確な診断のためには検査が必要です。
また、がんからの出血により黒色の便が出たり、体重の減少がみられることがあり、これをきっかけに検査を受けた結果、胃がんと診断されるケースもあります。

胃がんの検査方法

胃カメラ検査

胃カメラを使用して、食道・胃・十二指腸を観察します。また、胃がんの原因となるピロリ菌感染の有無についても確認することが重要です。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍

胃酸や消化酵素には食べ物を分解する働きがありますが、それらが胃や十二指腸の壁を深く傷つけることで潰瘍が発生します。主な原因の一つとして、ピロリ菌への感染が知られていますが、鎮痛薬（NSAIDs）の長期服用やストレスなども発症の要因となります。40代以降に多く見られるものの、ピロリ菌に感染している場合は若年層でも発症することがあります。

症状としては、みぞおちや背中の痛み、お腹の張り、吐き気、胸やけなどが挙げられます。

潰瘍が進行し、深くなると出血することがあり、吐血や血便がみられることもあります。さらに、自覚症状がほとんどないまま潰瘍が悪化し、突然胃や十二指腸に穴があく（胃穿孔・十二指腸穿孔）ことで急性腹膜炎を引き起こし、緊急手術が必要となるケースもあります。